ツキイチ連載
漢方職人「東海林さん」の漢方メモ
長年の臨床経験の積み重ねで構築されてきた中医学を語る「東海林さん」 お店では漢方職人と呼ばれています。自然の影響も考慮した中医学の膨大な知識の中から、みなさんに有益な情報を伝える連載コラムです。
2018.03.22
免疫力を司る超大事な「腸」
NHKで放映されている人体シリーズは、脳が司令塔となって内臓を動かしているのではなく、臓器同士が〝会話〟をして機能していることを伝えています。その会話を知れば若さや美しさを保つ秘訣が見えるだけでなく、その会話の異常が病気を引き起こすことも分かってきました。五臓六腑(ごぞうろっぷ)が相互に関係し合っていることは、中医学では大昔からの基本。最新の科学で裏付けられたことを、大変、嬉しく思います。第4回のテーマは「腸」。腸は食物を消化・吸収するだけでなく、「免疫を司る〝超〟大切な臓器」と説明しています。健康な腸内には約1000種類100兆個ともいわれる「腸内細菌」が活動し、また全身の7割の「免疫細胞」が集結しています。この細菌と細胞が連係して、身体の健康を保っています。しかし、近年、食文化の乱れや抗生剤の多用、過度の除菌などにより、現代人の腸内細菌の減少が問題視されています。中医学には「健康は脾(ひ)から」という考え方があります。脾とは胃や腸の消化吸収機能を意味します。飲食物から身体に不可欠なエネルギー[気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)]を作る源です。例えば「健脾散顆粒(けんぴさんかりゅう)」はハスの実やハトムギなどの豆類が、腸管粘液の分泌を促し、腸内細菌に快適な環境をつくります。中医学の健脾(けんぴ)の考えで、胃腸の本来の機能を正常に保ち、免疫力を高めてみませんか?
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2017.12.21
インフルエンザに効く漢方とは?
「インフルエンザ予防に有効な漢方があると、テレビで見たんですが…」という問い合わせが増えています。その番組の影響か、皆様一同にお求めになるのが、「㊶補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」。しかし体質は十人十色、すべての方に有効な処方ではありません。インフルエンザ対策には、中医学の「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」の考え方が有効です。「扶正」とは、身体の免疫力となる「正気(せいき)」を養うこと。正気とは食物から作られる気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)[精(せい)]によって維持されます。正気(免疫力)をアップして、ウイルスを寄せ付けない体作りが大切。「袪邪」とは、正気が弱って病気の原因となる邪気が体内に侵入したときに、邪気を追い出す対症療法。インフルエンザウイルスも邪気の一つ。症状により適応する処方も異なるため、「一概にコレ」とは言えませんが、一般的なインフルエンザの症状は熱性の症状が多く「天津感冒片(てんしんかんぼうへん)」や「板藍根(ばんらんこん)」などの辛涼解表剤や清熱解毒剤が使われます。保険医療では「麻黄湯(まおうとう)」が使われているそうですが、麻黄湯は温めて発汗を促す辛温解表剤なので、口渇して喉が腫れ高熱を出す症状には適応出来ません。学級閉鎖になっても発症しない子供は、胃腸が元気で正気が充実していたのでしょう。日頃から食が細く疲れやすい方は、扶正のための補中益気湯も有効です。最近SNSで話題になっている板藍茶(ばんらんちゃ)は、中国で有名な袪邪の生薬です。
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2016.12.15
湿度高くてもインフルが流行?
毎年冬になると大流行するインフルエンザ。その理由は「インフルエンザウィルスが低温・乾燥を好み拡散する性質を持つため」と言われていて、皆さんもそう認識していると思います。しかし今秋~冬の湿度は例年より高いにも関わらず、流行し始めたのは、なぜでしょうか?最近は夏場の沖縄でも流行しているよう。その原因は中医学的に考えると説明がつきます。中医学では気候の変化や細菌・ウイルスなど体に悪い影響を与える「邪気(じゃき)」の力が「正気(せいき)」(体を養い守る力)に勝ると発病すると考えます。また、正気を生み出す「脾(ひ)=(胃腸)」は湿気に弱いと言われ、本来の爽やかな秋になれば、夏の湿気で弱った胃腸が元気を取り戻し、食欲の秋を迎えて、寒い冬に向けて正気を蓄える時期。ところが、今年は秋晴れが少なく湿度が高く、免疫力と密接に関係する胃腸機能が弱った結果、ノロウイルスなどによる胃腸炎型の風邪も流行しました。つまり正気が弱ればウイルスが弱くても発病する可能性があるのです。これから年末年始にかけて、食生活も乱れる時期。弱った胃腸への負担が心配です。対策としては正気を養い邪気を取り除く「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」の考え方で、まず免疫力を上げるために「健脾散顆粒(けんぴさんかりゅう)」などの補気健脾薬(ほきけんぴやく)で腸を元気にすることが大切。外出する時は「板藍根(ばんらんこん)」などの解毒薬でウイルスなどの邪気を退治しましょう。
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2015.12.17
ウイルスに負けないカラダづくり
慌ただしい年の瀬は、何かと無理をしがちで、免疫力が低下する傾向にあります。加えてノロやインフルエンザなど、強い感染力を持つウイルスが蔓延するため、体調を崩す方も多いのではないでしょうか。当店では中医学の「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」の考え方で「ウイルスに負けないカラダづくり」を推奨しています。中医学では病気が起こる原因を二つの方向から考えます。一つは体内の「正気(せいき)」不足。正気とは体が病気に対抗する〝免疫力〟のような存在で「衛気(えき)」や「血(けつ)」によって維持されています。不足すると、臓器の働きが弱くなり、防御力が低下して病気にかかりやすくなります。もう一つは病気をもたらす「邪気(じゃき)」の影響です。邪気は体に悪い影響をあたえるものの総称。気候や環境など外から入り込む外邪(がいじゃ)[風(ふう)・寒(かん)・暑(しょ)・湿(しつ)・燥(そう)・火(か)の六淫(ろくいん)など]と体内に発生する内邪(ないじゃ)[痰湿(たんしつ)や瘀血(おけつ)など]があります。花粉などのアレルゲンやウイルスは外邪にあたります。病気を予防・改善するためには、日ごろから正気をしっかり養い(扶正)、邪気に侵されてしまったら早めに取り除くこと(袪邪)が大切。ただし、正気を養っても邪気はそのまま、邪気を取り除いても正気は足りない――そんな偏った対処では体質改善にはつながりません。自分の体にあったバランスのよい「扶正袪邪」をご指導します。花粉症も今からの扶正が有効です。
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2021.07.29
今こそつけよう免疫力
国内のコロナワクチン接種が進んでいます。感染拡大と重症化予防に有効ですが、ワクチン接種を終えてもマスク着用による感染予防と、腸内環境を整え免疫力を高めることが大切です!暑い日は、つい冷たいジュースやアイスを食べたくなりますが、冷たい物の摂りすぎは胃腸への負担がかかるもの。実際、消化機能は約37~38℃で良く働くと言われています。「脾(ひ)」(胃腸)は冷えと湿邪(しつじゃ)を嫌います。蒸し暑い日本の夏は、冷たい飲食物や湿気により、体内に余分な水分や老廃物がたまりやすくなり、血の巡りも悪くなりがちに。そのため消化不良や胃腸の機能低下につながり免疫細胞の働きも悪くなります。また、脾が弱って邪気(じゃき)と戦う「正気(せいき)」が不足すると、感染リスクも高まります。この時期、舌苔が白く厚く、舌辺に歯痕がある方は「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」の服用がおすすめです。元々寝冷え・夏風邪に使われる処方ですが、蒸し暑さで弱った脾を湿邪から守り、正気を高めて免疫力の低下を防ぎます。それでも、猛暑が続いて疲れてしまった時には「生脈散(しょうみゃくさん)」や「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」などで気を補いましょう。「生脈散」は汗で失った体の潤いを補うこともできるので、熱中症対策には最適です。
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2021.05.27
ワクチン接種前にやるべきこと
湿度の高い日が多くなりました。「毎年この時期は体調を崩しがち」という方は、中医学で言う「湿邪(しつじゃ)」に弱いタイプでしょう。体にとって過剰な湿気(湿邪)は、むくみや重だるさ、頭痛、食欲不振、軟便など様々な不調を引き起こす原因となります。特に湿邪が影響する脾(ひ)<≒胃腸>が弱い方は要注意です。また、腸は免疫を作る臓器としても知られています。免疫力を保つためにも湿邪対策は大切です。湿邪から脾を守る「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」などで腸を元気にして、「玉屛風散(ぎょくへいふうさん)」などで衛気(えき)<≒体のバリア機能>を高めておくことは、感染予防に役立つと再三説明してきましたが、ワクチン接種にも同じことが言えると思います。ワクチン接種が始まり副反応に対する不安を抱えている方が多いと思います。感染しても重症化しないよう抗体を作るのが目的ですから、抗体が作られる時に、何らかの反応が出るのは自然なことだと考えます。使用されているワクチンは個人差はありますが、熱感や頭痛などの副反応が報告されています。風熱型の風邪に用いる「銀翹散(ぎんぎょうさん)」などを常備しておくと良いでしょう。胃腸を元気にして、栄養を十分にとり、睡眠もしっかりとって免疫力を高めておくことが抗体作りに役立つはずです。
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2021.08.26
自宅療養中の強い味方
連日、新規感染者数が過去最多を更新し、自宅療養者が累積していく現状の中、自宅やホテルなどの療養施設では、経過観察が主となっているようです。対策が間に合わず、もはや「自分の身は自分で守れ!」と突き放された感じがします。個人に出来るのは、これまで以上に、感染予防対策を続ける。加えて中医学の「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」の考え方を取り入れ、先ずは扶正[正気(せいき)=気・血・水を補う]して免疫力を高めましょう。正気を補う漢方処方は沢山あります。新型コロナウイルスのような強力な邪気(じゃき)を袪邪するには「温病(うんびょう)」の理論を応用すべきです。「激しい頭痛」「高熱が出る」「のどが腫れて痛む」といった風熱型の症状が特徴のウイルス感染症には、清熱解毒(せいねつげどく)が必要です。「銀翹散(ぎんぎょうさん)」などの辛涼解表(冷やして発散)作用のある処方で、早めにウイルスを減弱化できれば、重症化のリスクは軽減できると考えます。熱性の咳が出てきたら「麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)」など、症状に応じてその他の処方と組み合わせて使うと効果的です。「銀翹散」などの辛涼解表剤は漢方薬局で購入出来ます。熱っぽい、頭痛、のど痛などの初期症状を自覚したら、すぐに服用出来るよう、「お守り」代わりに一包携帯していると安心ですね。
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2021.09.30
湿邪から燥邪に変わりゆく秋
季節の変わり目は不調が出やすくなる時期。特に近年の秋は、残暑がいつまでも続いて湿度も下がらないため「湿邪(しつじゃ)」に弱い「脾(ひ)」=(胃腸)の吸収力が弱ったまま「気陰両虚(きいんりょうきょ)」(元気と潤い不足)となり、秋バテしている方を多く見受けます。また最近増えているのが「カラ咳」に関する相談です。秋が進めば空気が乾燥してくるので「燥邪(そうじゃ))」に弱い「肺」に影響がでやすくなります。中医学でいう肺は呼吸をするだけでなく、潤いをもたらす津液を体中にめぐらす役割も担っています。肺の気と陰を補うと、外気と接する皮膚や粘膜を潤すため、乾燥や外邪から体表を守る働き「衛気(えき)」を強化してくれます。そのため肺の気が弱ると、鼻水やカラ咳などの症状がでるだけでなく、免疫力も低下してしまいます。さらに体だけでなく「悲しみ・憂い」といった感情も強まると考えます。気陰両虚による秋バテの回復と、肺の元気と潤い補給におすすめの漢方処方が「生脈散(しょうみゃくさん)」です。人参・麦門冬・五味子のシンプルな処方ですが、この時期の夏の疲れを癒し、乾燥する秋から冬に向けて肺を守り、衛気を高めて感染症の予防にも役立てましょう。ワクチン接種は進んでいますが、ブレイクスルー感染予防にも役立つはずです。
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2016.06.16
バルトリン腺炎 辛い痛みは漢方で!
なかなか人には相談しにくいのが、陰部の疾患。特に「バルトリン腺炎」は人知れず悩んでいる方が多い病気と言われています。バルトリン腺とは膣の内側に左右一対あり、性行為を滑らかにする液を分泌する腺のこと。ここに大腸菌やブドウ球菌、溶連菌などが感染して炎症を起こすのがバルトリン腺炎です。この病気は外陰部の疾患の中で最も多くみられるもので、性行為がなくても体力・免疫力の低下で感染してしまう人が多い様です。症状は患部の腫れや痛み、膿がたまる膿瘍・膿疱など。悪化すると「歩けないほどの激痛」を伴います。西洋医学の治療法としては抗生剤を使いながら、膿を抜く、腺を手術で切除するなどの方法が一般的ですが、「痛みに耐えて膿を抜いたのに、またすぐ腫れた」「しこりが残って治らない」など繰り返し発症する方が多く悩みが尽きません。当薬局にも、長年バルトリン腺炎に悩んでいた方が「ネットで情報を見て…」と半信半疑で来店されます。中医学では、腫れ痛みの激しい急性期には、湿熱(しつねつ)・熱毒(ねつどく)を除く清熱解毒薬(せいねつげどくやく)を中心に、緩解期には気血(きけつ)不足を補う漢方で再発しにくい体作りを目指します。体験者の方からは「繰り返す痛みが想像以上に早く引いた」「再発しなくなり体調まで良くなった」など嬉しい感想を多数いただいております。相談は問診が主です。先ずはお電話を!
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2013.01.24
粘膜マスクが花粉を防ぐ
花粉症の人にとっては、憂鬱な季節がやってきました。今年の花粉の飛散数は昨シーズンの3~7倍になると言われています。西洋医学では、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなど、体に花粉が侵入した「結果」で引き起こされるアレルギー症状を薬で抑える対症療法が一般的です。一方、中医学では「未病(みびょう)」の段階から皮膚・粘膜が本来持っているバリア力を高め、花粉に強い体質を作ります。そのために必要なのは「衛気(えき)」を養うこと。衛気とは外から侵入してくるウイルス・細菌などの病原体や花粉などの刺激物「外邪(がいじゃ)」から体を防衛する「気(き)」=(エネルギー)の力です。眼や鼻の粘膜を覆っているバリア細胞を修復させる働きがあり、要は粘膜にマスクをかけるエネルギーとイメージして下さい。風が吹く春は、外邪の影響を受け易い季節。衛気が不足していると、花粉症のみならず様々な感染症に罹り易くなります。この衛気を補う代表的な処方が「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」です。「優れた屏風を立てて外邪の侵入を防ぐ」というネーミングからも分かるように、ウイルスや花粉をバリアしてくれるのです。この「玉屏風散」を飲みやすく顆粒にした「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」は毎年多くの方にご好評いただいております。花粉シーズン前からの服用が最も効果的ですが、シーズン中でも症状を軽減することが出来ます。
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